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4.3.3 アクトミオシンモーター
(1) 生命システムの概要
筋肉の構造は複雑であるが、タンパク質の集合体であり、基本的には「アクチン」および「ミオシン」と呼ばれる2種類の繊維状タンパク質で構成されており、これらが筋肉の収縮に関係している。
図4−18に示すように、脊椎動物の筋肉では、太い繊維であるミオシンと、Z膜の両側からのびた細い繊維であるアクチンがかみ合うように同じ方向に並んで存在している(竹本,1995)。Z膜によって仕切られたこの単位は2.5ミクロンほどの大きさで、サルコメアと呼ばれ、アクチン−ミオシン分子モーターからなる筋力を生み出す基本単位となっている。アクチンフイラメントがミオシンフィラメントによってサルコメアの中央部へとたぐり寄せられ、滑り込むことによって筋肉の収縮が起こる。これが筋肉の力を発生させている。2.5ミクロンの大きさのサルコメアは2ミクロンにまで収縮し、これが筋力の源となっている。我々が運動するときはこのような繊維状タンパク質の構造変化が分子レベルで行われている。
ミオシンの突起部分にはATPを結合・分解するサイトが存在し、それによって生じたエネルギーをアクチンフィラメント上を滑らせる力に使用している。このように生体内では化学エネルギーを機械エネルギーに変換され消費されているが、この時のエネルギー変換効率は60%にも達すると言われ、極めて高効率のエネルギー変換が行われている。

 

(2)学ぶべき生命の機能
これまでに、筋肉の収縮機構に関しては、1954年にイギリスのH.E.HuxleyらおよびA.F.Huxleyらにより提唱されたミオシンの太いフィラメントの間にアクチンの細いフィラメントがすべり込んでいくという「滑り説」が一般に受け入れられてきた。滑りの仕組みはミオシンの突起部分がATPと結合しミオシン−ADP−Pi複合体となり、アクチンモノマーと結合してアクチン分子を動かし、ADPとPiが離れるというサイクルで進み、ミオシン分子の頭部がアクチン分子と結合する際にコンフォメーション変化により首を振る「首振り説」によるものと考えられてきた(図4−19)。この説では化学反応(ATP分解)と力学反応(滑り)が1:1に共役しており、ATP1分子が分解されるたびにアクチン1分子分(約6nm)程度移動すると考えられる(Spudich,1994)。

 

 

 

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